1-4. 地球テクトニクスと測地学

京都大学大学院理学研究科 福田洋一

地球は46億年前に誕生して以来, 内部のエネルギーを開放しながらさまざまな造構運動を続け, 現在の姿となった. テクトニクスとはこのような地球の変動や歴史を研究する学問分野であるが, 測地学は, 現在という時間軸の接線で, 地球の変動, すなわちテクトニクスを扱った学問分野とも言えよう. 「大陸移動説」に端を発したプレートテクトニクスは今では良く知られた理論の1つであるが, わずか年間数cmのプレートの動きが実際に検出できるようになったのは, VLBI(Very Long Baseline Interferometry)などの宇宙測地技術が利用できるようになって以降のことである. また, 海底地形や地下構造にはプレート運動の痕跡が多く記録されているが, その解明にも測地学的手法が利用されている. 現在, 衛星高度計(海面高度計)を利用することで, 世界中のほぼすべての海域での詳細な重力異常が明らかにされ, さらに重力異常から海底地形までも推定されるようになっている. その結果, 海底のフラクチャーゾーンやホットスポットを起点とした海山列の追跡など, 過去のプレート運動を知る貴重な情報が得られている. また, 衛星の軌道追跡から得られる長波長の重力場データは, 地球内部での静水圧平衡からずれた密度分布を反映しており, 地球の深部密度構造の推定やマントル対流の様式を決める上でも重要な拘束条件を与えている. さらに, 今後の衛星重力ミッションによる高精度な重力場データは, プレートの沈み込みと大陸地殻の形成, ブーゲ異常と地形, アイソスタシーなど, 地球テクトニクスの研究にも大いに利用できるものと期待されている.

第3部 VERA-VLBI

第3部 プレート間カップリング

新第3部 海底地殻変動観測

新第3部 VGOS -次世代VLBI観測システム-