1-3. 火山学と測地学
京都大学大学院理学研究科 福田洋一
地震学同様, 火山学も測地学と深い関わりを持っている. 例えば, 火山噴火に伴う地形の変形は, 地球の形を扱う測地学と最も直接的に関係する部分であるし, 火山噴火予知においても, 前兆現象をつかむ上で, 測地測量や地殻変動観測は大変重要な役割を果たしている. また, 火山の内部構造を知る方法としても, 地震探査や電磁気探査とともに, 重力探査が果たす役割は重要である. さらに, 重力は地下での質量移動を直接反映するため, 最近では, 精密重力の繰り返し測定が, 火山のマグマの動きをモニターする1つの有力な方法となっている. 従来, このような目的での精密重力測定にはラコスト重力計を代表とするスプリング式の相対重力計しか用いることができなかったが, 近年, 絶対重力計が比較的容易に持ち運べるようになり, 三宅島や富士山の頂上でも絶対重力測定が実施されている. このため, 測地学的手法による火山活動の監視として, 水準測量やGPS測量などの精密位置計測とともに, 絶対重力測定と相対重力測定を組み合わせたハイブリッド重力測定を併用することが大変有効となっている.
火山の噴火に伴う地殻変動および地形の変化は, 地震の場合に比べても大変大きいものであるが, 火山噴火地帯は一般に危険で近寄り難いとともに, 火山そのものが人里から離れていることが多く, 地上での観測が困難なことも少なくない. このような火山活動のモニターにはリモート・センシングが有効であるが, その1つとして, 干渉SAR(Synthetic Aperture Radar)が用いられるようになっている. 干渉SARとは, 時期の異なる2枚のSAR画像の差(位相差)から, その間の地殻変動を空間的にマッピングする技術で, 地震の断層運動のマッピングなどにも利用されている. 火山では, 茂木モデルなどを用い, 干渉SAR画像にあうようにモデル計算を実施することで, 地下でのマグマの動きを推測することなども行われている.