セッション4報告
宇宙測地技術を用いたプレート運動の決定とその解釈
セッション4は19日火曜日の午後にC会場(406)で口頭発表が、多目的ホールでポスター発表が行われた。
口頭、ポスターを通じてキャンセルは2件のポスター発表だけ(McClusky et al., Sedighi et al.)でほぼ予定のスケジュールに従って進行することができた。
会場は適当な収容能力を有しており、他に2セッションが同時に進行していたにも関わらず常時座席の8割方が埋まっており、セッション途中の聴衆の入れ替わりも少ない印象であった。
ほぼすべての講演に関して活発な質疑応答があり、論文の学術的レベルも水準以上であったと思われる。
口頭発表はグローバルなプレート運動に関する講演(Blewitt and Lavalee, Cretaux
et al., Ma and MacMillan, Li and Wang, Sillard and Regnier)が最初に行われ、さらに上下変動に関した講演(Xu et al.)、続いて地域的なプレート運動に関する講演が南米(Feymueller et al.)、 南太平洋(Beavan et al.)、 南極(Dietrich et
al.)、 北米西部(Bennett et al.)、インド(Malaimani et al.)、 西アジア(Tari et
al.)、 欧州(Haas et al.)と次々に行われた。ポスターでも同様にグローバルなもの(e.g. Hu et al.)、特定の地域を扱ったもの(e.g. 欧州:Calais et al.、アフリカ:Kasahara et al.等)があった。
他セッションに比べて対象となる地域が広範であるためGPS以外にもDORIS(Cretaux et al.)、VLBI(Ma and MacMillan, Li and Wang, Haas et al.)等のGPS以外の宇宙測地技術による計測結果の報告が多かった。
またグローバルな解では水平速度だけでなく、有意な上下速度の報告が目立った(e.g.
Blewitt and
Lavallee, Ma and MacMillan)。
プレートの動きとしては従来単一プレートとして扱われることが多かったインドプレートとオーストラリアプレートが明確に分離できること(Blewitt and Lavalee他複数)、しかし従来からソマリアプレートとヌビアプレートに分かれるとされていたアフリカプレートの分離は宇宙測地データでは明らかでないこと(Cretaux et al.)等が報告された。
測地学的にみた太平洋プレートの速度がモデルに比べて速すぎることはかなり共通認識になりつつあるが、すべてのプレートを通して速度がNUVEL-1かNUVEL-1Aのどちらに合うか(つまり地磁気逆転年代の約5%の改訂は正しかったか)という問題について触れたのは Cretaux et al.だけであった。
プレートの内部変形に関しては、従来から言われているようにユーラシアプレートは特にアジア地域で変形が大きく、ユーラシアプレートに準拠した速度場を定義する際には格別の注意が必要なこと(Blewitt and Lavalee)が強調された。
また欧州で最も内部変形の少ない速度基準の選択に関する数値的な議論について Calais et al.がポスター発表で報告していた。
また Harada et al. のポスター発表で我が国による太平洋プレートの変形の検出を目指したGPS網の展開が紹介された。
日置幸介