セッション14報告
地球科学のためのGPS測地の新技術開発


 本セッションでは,GPS受信機開発に関する発表が4題,GPSの新たな応用に関するものが1題,GPSデータを用いた地殻活動モニターに関するものが1題,GLONASSの試験観測の解析結果に関するものが1題であった.

 GPS受信機の開発に関するものとしては,招待講演者のSTOWELL氏から2000年1月にLeica社より発売予定の小型2周波受信機について発表された. この受信機は火山地域の地殻変動をリアルタイムでモニターすることを目的に製作されているため,低消費電力を実現しており,通信機能も内蔵されている. RIZOS氏からは,New South Wales大学で開発された1周波受信機の日本における実験結果が報告された.  実験は国土地理院と共同で行われており,解析はGEONETの観測点のデータと同時に,同大学で開発されたプログラムを用いて行われ,水平方向にでは2周波受信機のデータより選られた結果と同程度であった. また,1時間のセッションによる解析結果についても2周波受信機の結果と同程度であることが報告された. NAKAOから東京大学地震研究所で開発された1周波GPSシステムの概要について発表された. また,すでに2年間行われている稠密試験観測結果のなかから,1998年4月の伊豆半島東方沖地震に伴う地殻変動が空間的に密に観測されたことが報告された. DING氏からは狭い範囲での地殻変動をモニターする目的で製作されたGPS受信機が発表された. これは1つの1周波GPS受信機に6台のアンテナを接続し,マルチプレクサーを用いてアンテナからの信号を受信す るものである.

 KOBAYASHI氏からは東海地域における地殻活動監視の目的で現在気象庁で運用されて いるデータ収録,監視システムについての発表があった.東海地域では高感度のボア ホール体積歪計多数設置されているが,GPSによる地殻変動と比較することにより地 殻変動シグナルの検出の確度をあげていることがこのシステムの特徴である.

 STEWART氏からはInternational GLONASS Experimentの解析結果について報告があった. 講演では南半球の基線についてGPSとGLONASSとの同時解析の結果,0.1ppmの相対精度がえられ,GPSとGLONASSと同時解析のよさが示された.GPSで地震動をとらえる実験の結果がGE氏より発表された. 振動台の上に1つのGPS受信機を設置し,20Hzサンプリングでreal-time処理された解を得ることができ,広帯域地震計の記録と比べた結果,GPSでも地震動(加速度,速度)が観測できることが報告された.

中尾 茂


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