地球の表面はプレート(リソスフェア)と呼ばれる十数枚の固い岩盤で覆われている(図1).個々のプレートは剛体に近くプレート内部の変形は非常に小さい.しかし各プレートが異なる方向に運動しているため,異なるプレートが接する境界ではプレート間の相互作用によって様々な現象が生じる.プレート境界は,2つのプレートが次第に離れて広がる場所(海嶺などのプレート発散境界),プレート同士がすれ違う場所(プレート横ずれ境界),プレート同士が互いに近づく場所(プレート収束境界)に分けられる.さらに,プレート収束境界には,一方のプレートがもう一方のプレートの下に沈み込む場所(プレート沈み込み帯)と2つのプレートが衝突している場所(プレート衝突帯)がある.横ずれ型プレート境界の代表例としてはアメリカ合衆国カリフォルニア州のサンアンドレアス断層やトルコのアナトリア断層がある.一方,日本周辺の日本海溝や南海トラフ,中南米の太平洋沿岸地域などはプレート沈み込み帯の典型である.プレート衝突帯としてはヨーロッパ・アルプスやヒマラヤなどが有名であるが,日本列島でも伊豆半島が本州に衝突していると考えられている.
プレート境界におけるプレート間の相互作用(プレート間カップリング)は,プレート境界のタイプによって大きく異なり,その結果そこで生じる地震,火山噴火,地形形成などの様子も違ってくる.プレート運動とプレート間の相互作用に注目して地学現象を説明する理論体系はプレートテクトニクスと呼ばれ,プレート運動が科学的に実証された1960年代以降急速に発展した.近年ではVLBIやGPSなどの宇宙測地技術を利用してプレート運動が実測できるようになり,高精度の議論が可能になってきている.
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図1. 世界のプレートとプレート境界.二重線はプレート発散境界を,一重線は横ずれ境界を,三角の付いた線はプレート収束境界を表す.紫はプレート内変形が生じている地域.
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