大地震の発生時に断層のずれが大きかった場所はアスペリティと呼ばれる(Lay et al., 1980).最近,東北日本の太平洋側で発生した大地震のすべり分布を古い地震記録の解析から推定し直した結果によると,アスペリティは地震のたびに場所を変えるのではなく,同じアスペリティが繰り返しすべって地震を発生していること.一回の地震で複数のアスペリティがすべることがあり,同時にすべるアスペリティの組み合わせで地震毎の違いが生じることなどが明らかになった(Yamanaka and Kikuchi, 2004).プレート境界で大地震が発生する場所が予め決まっているということは,将来の大地震発生を予測する上で大変重要である.
アスペリティの位置やサイズは,大地震が起きて初めて明らかになるものだが,非地震時の地殻変動データを解析すればプレート境界の固着域を推定することができる.GPSデータを解析して得られたプレート境界面のすべり欠損分布(Nishimura et al., 2004)とアスペリティの分布を比較すると,1994年三陸はるか沖地震が起きた青森県東方沖ではプレート間の固着が小さいが,それ以外の場所では最近数十年間に発生した大地震のアスペリティがすべり欠損の大きい領域に対応していることが分かる(図6a,図6b).
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図6. (a)東北地方太平洋側のプレート境界で発生した地震のアスペリティ分布(Yamanaka and Kikuchi, 2004).(b)GPSデータから推定したプレート境界面のすべり欠損分布(Nishimura et al., 2004).
参考文献
Lay, T., L. Ruff, and H. Kanamori(1980):The asperity model and the nature of large earthquakes in subduction zones, Earthq. Pred. Res., 1, 3-71.
Nishimura, T., T. Hirasawa, S. Miyazaki, T. Sagiya, T. Tada, S. Miura, and K. Tanaka(2004):Temporal change of interplate coupling in northeastern Japan during 1995-2002 estimated from continuous GPS observations, Geophys. J. Int., 157, 901-916.
Yamanaka, Y., and M. Kikuchi(2004):Asperity map along the subduction zone in northeastern Japan inferred from regional seismic data, J. Geophys. Res., 109, B07307, doi:10.1029/2003JB002683.
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