プレート境界で大地震が発生するメカニズムは以下のように要約される.大地震が起きるプレート境界は通常固着しており,プレート間のずれが生じない.2つのプレートはそれぞれ固有の速度で運動しているため固着したプレート境界周辺でプレートが変形し,弾性エネルギー(ひずみ)が蓄積する.この変形によって生じるプレート境界の剪断応力がプレート境界の固着強度よりも低いとプレート境界は固着したままである.しかし,プレート運動の進行によってプレート境界の剪断応力は次第に増加する.そして応力が固着強度に達するとプレート境界面は破壊し,断層のずれが生じて1つのプレート内に蓄積された弾性エネルギーが解放される.これが大地震の発生である.この後プレート境界面では固着が回復し,プレート運動に伴って次の大地震へ向けたエネルギーの蓄積が再開される.プレート境界では,このようにプレート境界の固着による応力の蓄積と地震発生による応力解放が繰り返されている.こうした大地震の繰り返しを「地震サイクル」と呼ぶ.西南日本太平洋側の南海トラフでは大地震が120年程度の間隔で繰り返しており,プレート境界における地震サイクルの典型的な例である.また,地表では地震サイクルに伴いひずみの蓄積・解放に対応した特徴的な地殻変動が生じる.これを地震サイクルに伴う「地殻変動サイクル」と呼んでおり,四国ではその典型的な例が観測されている(図2a,図2b).
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図2. (a)南海トラフにおける大地震の繰り返し(石橋・佐竹, 1998).(b)四国地方南部の上下変動.1946年に南海地震が発生し室戸岬(M)が大きく隆起した.地震前および地震後には逆向きの地殻変動が見られる.
参考文献
石橋克彦・佐竹健治(1998):地震研究によるプレート境界巨大地震の長期予測の問題‐日本付近のプレート沈み込み帯を中心として‐,地震, 50, 別冊, 1-21.
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