目次 | 第3部 応用編 | 電子基準点
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1.GEONET 2.地殻変動観測 3.GPS測量の基準点 4.リアルタイム測位 5.測地基準系の維持

電子基準点 − 測地基準系の維持

 プレート運動地殻変動によって電子基準点の位置が変わるのなら,測位に用いる電子基準点の座標も変わるのではないだろうか?これは素朴な疑問だが,答えは意外に複雑である.というのは,地殻変動の観測などには物理的な正確さを重視した座標値が用いられるが,日本の測量の基準である測地成果2000では,基準点の座標値をある定められた時点における値に固定しているからである.通常の人間生活で土地の緯度・経度・高さを扱う場合,座標値が多少ずれていても,ずれ方が一様で地域的に大きなひずみがなければ実用的な問題は生じない.逆に,座標値が毎日変化するのでは,混乱を招く.測地成果2000における固定された座標値は,物理的な正確さよりも実用性を重視したものになっている.それは,たとえ物理的な正確さが犠牲にされていても,「世の中の取り決めとして」正しい座標値である.

 しかし,日本のようにプレート運動や地震等による地殻変動の大きな地域では,測地基準系は必然的に時間と共に歪んでゆく.測量に不都合が生じるほど大きな矛盾が生じた場合には,座標値の改訂を行う必要がある.実は,電子基準点による地殻変動観測は,座標値のずれが実用的に許容できる範囲を超えていないかどうかを判断し,座標成果を維持管理するためにも役立っているのである.




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