GEONETのGPS連続観測点の座標値の変化を観測することによって地殻変動を監視できる.GEONETは,高精度,高密度,連続観測,という3つの大きな利点によって,これまでの地殻変動観測を大きく刷新した.その精度は,水平成分で3mm程度,上下成分で1cm程度に達する.従来の地殻変動観測は,地震・火山活動等のイベントの際に現地で測量を行い,そのデータを解析して座標を求めていたので,計算結果が出るまでに何日もかかった.また,地殻変動の算出に必要なイベント前の観測データが何年も前であることが普通だったので,解析結果には注目しているイベント以外の変動が含まれ,その分離には不確定さが伴うのが常であった.GEONETは連続観測によって文字通り「網を張って」待ちかまえているので,地震の瞬間を捉えることができる.
GEONETのデータは,数々の地震/火山等のイベントについて断層モデルやマグマの力源モデルの推定に用いられ,そのメカニズムを明らかにしてきた他,日本周辺のプレート運動が日々実測され,地震発生の背景となるプレート間カップリングや,ゆっくり地震といった他の観測手段では捉えられない現象を捉え,地殻活動に関する新しい知見を次々と生み出している.GEONETは地殻変動観測に欠かせない基盤的な観測網としての役割を果たしている.
|
図4. 電子基準点による地殻変動観測.1996-1999年のデータから推定された日本列島の地殻変動速度場.
|