GPS連続観測システム(GEONET:GPS Earth Observation Network System)は,GPS測量のための基準を与えることと地殻変動の監視を目的として,国土地理院が構築したシステムで,約20km間隔で日本全国の陸域を覆う1224点(2004年6月現在)のGPS連続観測点とデータ通信・解析・データベース化等を行う処理システムからなる.GPS測量の基準としてのGPS連続観測点を指して「電子基準点」という名称も使われる.
各観測点には高さ約5mのピラーが設置され,その頭部のレドームの中にGPSアンテナが,胴体内部には受信機が設置されている.胴体内部には,他にデータ通信のための機器,一時的停電の対策のためのバッテリー,ピラーの傾斜検出のための傾斜計等も設置されている.現地ではGPS衛星のシグナルを1日24時間連続観測し,そのデータは通信回線を通して国土地理院へ転送される.
全国のGPS連続観測点から集められたデータを解析することによって,各点の毎日の座標値が計算される.求められた座標値は,地殻変動の観測や測地基準系の維持等に役立てられる.また,観測データを測量のユーザーに提供することにより,電子基準点を用いたGPS測量に利用されている.最近では,データ転送がリアルタイムで行われるようになり,数cmの精度でリアルタイム測位が可能になっている.
GEONETは,その本来の目的以外にも様々な研究に応用できる.海洋潮汐や積雪等の荷重による地殻の変形の検出や,また,地球の大気や電離層によって生じるGPSのシグナルの誤差を逆手に取って,電離層の電子密度や大気中の水蒸気を観測することもできる(GPS気象学).
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