湖とはいえ,目で見た人間はいない.なぜなら,ボストーク湖は南極大陸奥深く氷床下に存在する湖だからである.Vostok Lakeではなく,Lake Vostokと書く慣わしになっている.
図1はレーダーサット衛星の合成開口レーダーが捉えた南極の画像である.東南極には,平均の厚み約2600mの氷床が,平均標高約20mの岩盤上に乗っているが,ボストーク湖のあるウィルクスランドでは,4760m厚あるところもあり,そこでの岩盤標高は-1800m以下である.
何故,湖があるのがわかったかというと,航空機による電波探査(アイスレーダー)により,広大な水平成層を持つ反射層の広がりが見つかったことが端緒である.凹凸のある岩盤と接した固体の氷は,受ける力が一様でないから,その上層まで皺しわのある層となる.
水平成層の存在は大規模な水の層がある場合しか考えられず,地震探査や重力探査などが行われた結果,総合的に湖と判断され,その大きさが求められた.Lake Vostokは長さ(緯度方向)約200km,幅(経度方向)約50-100kmで,氷厚およそ3700mの氷床下に深さおよそ500mの水をたたえた湖である.湖の南東端にあたる雪面上にはロシア(旧ソ連)のボストーク基地がある.
実は,東南極大陸にはこのような氷床下湖が70以上あると言われていて,その探査が国際的なテーマになっている.
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図1. Radarsat SAR散乱画像によるボストーク湖.湖の形がくっきりわかるくらい,平坦で一様な散乱を示す.南端にボストーク基地(ロシア)がある.(Wendt, A., et al. より)
参考文献
Wendt, A., Dietrich, R., Wendt, J., Fritsche, M., Lukin, V., Yuskevich, A., Kokhanov, A., Senatorov, A., Shibuya, K. and Doi, K. (2004): The response of the subglacial Lake Vostok/ Antarctica to tidal and air pressure forcing, Geophys. J. Int., submitted.
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