目次 | 第3部 応用編 | SLR
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1.SLRって何 2.SLRの観測装置 3.SLR観測を行う人工衛星,ILRS 4.SLRの解析 5.何がわかるのか

SLR − SLR観測を行う人工衛星,ILRS

  SLR観測を行う人工衛星

 SLR観測を行う人工衛星には逆反射プリズムが取り付けられている.衛星側にはこのプリズムを取り付けるだけですみ電源などを要しないので,SLR専用衛星(測地衛星)の寿命は半永久的である.2004年7月現在,50の衛星がSLR観測可能で,このうち8個は測地衛星である(表1).測地衛星は球形をしており,測定した距離に衛星の半径を加えれば衛星の重心までの距離が得られる.衛星が球形でない場合は,衛星の位置や姿勢の情報などから,観測した距離を衛星の重心までの距離に補正する.

 現在,測地衛星の中ではLAGEOSとLAGEOS-IIの観測が最も重点的に行われているが,日本の測地衛星あじさい図5)も重力場の決定に重要な役割を果たしており,精力的に観測がなされている.軌道高度の高い衛星は,より広い範囲から観測が可能で衛星の軌道もより正確に決定できるので,地球基準座標系の構築や地球の重力場の低次項のモニターに適している.逆に,高次の地球の重力場の研究には,軌道高度の低い衛星を用いる必要がある.ただし,軌道高度が低すぎると大気の影響を強く受けるため,測地目的に適さなくなる.

  ILRS

 SLRの観測成果を測地学や地球物理学の研究に有効に活用するため,国際レーザー測距事業(ILRS:International Laser Ranging Service)が組織されている(http://ilrs.gsfc.nasa.gov/).ILRSでは,SLRの観測データが均質となるようSLR観測の標準化が進められ,測地学的・地球物理学的成果がより豊富に得られるよう観測する衛星の優先度や観測方法を推奨している.また,ILRSのもとでSLRデータの収集と解析がなされ,地球回転パラメータ,地球基準座標系をはじめ,様々な解析結果が出されている.

表1.SLR専用衛星(測地衛星)
名称 打上げ 半径(cm) 軌道傾斜角(度) 近地点高度(km) 離心率 公転周期(分)
Starlette 1975 12 50 800 0.02 100
LAGEOS 1976 30 110 5900 0.005 230
Ajisai 1986 107 50 1500 0.01 120
Etalon-1 1989 65 65 19100 0.0006 680
Etalon-2 1989 65 65 19100 0.0007 680
LAGEOS-2 1992 米・伊 30 53 5600 0.014 220
Stella 1993 12 99 800 0.000 100
LARETS 2003 22 98 700 0.0002 100


図5.測地衛星「あじさい」(JAXAのホームページ内「あじさい」の紹介ページより).


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