SLRの観測装置では,天空上を移動していく人工衛星に向かってパルスレーザー光を送信し,衛星からの反射光を受信することにより,衛星までの距離を測定する.観測装置は,レーザーの送受信のための光学系,レーザー発振器,送受信した光を検出し往復時間を測定するエレクトロニクス,制御部,記録部,時計部などから構成される.送信するレーザー光はビームを鋭く絞って高い指向性をもたせる必要があるが,この送信ビームを衛星に当てるためには,衛星の軌道をあらかじめ算出し,送信ビームを正確に衛星に向けなければならない.反射光の強度は,衛星までの距離の4乗に反比例するため,高高度の衛星では衛星からの反射光は微弱となる.
衛星からの反射光を観測する際,受信望遠鏡の視野内の背景光がノイズとなる.このノイズを低減させるために,1)空間的なフィルタリング(受信望遠鏡の視野を狭くする),2)時間的なフィルタリング(受光センサーの動作時間を短くする),3)周波数領域でのフィルタリング(レーザー光の周波数付近のみを透過するフィルターを使用する),4)受光シグナルの強さによるフィルタリング(弱い信号は除く)などが行われる.
GPSやDORISなど衛星からの電波を無指向性のアンテナで受動的に観測する装置と比べて,地上から指向性の高いレーザー光を能動的に発射するSLRでは,観測装置が大型となる.また,出力の大きなレーザー光を発射するため,観測は一般に有人で行われる.観測装置をコンパクトにし,レーザー光の出力を小さくするなどして無人観測が行えるよう,システム開発が米国航空宇宙局(NASA)で行われている(http://cddisa.gsfc.nasa.gov/920_3/slr2000/slr2000.html).
図4にSLR観測局の分布を示す.
LLR観測の原理もSLRと同じであるが,月までの距離は遠いため受光シグナルが極めて微弱となる(20回に1回,1つのフォトンが返ってくる程度).現在,米国テキサス州と南フランスの2カ所で観測が行われている.
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