目次 | 第3部 応用編 | 航空重力測定
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1.役割 2.現状 3.測定システム 4.測定例 おわりに

航空重力測定 − 航空重力測定の役割

 我々,測地,測量,地球物理,地質学に関わる者は,ジオイドの決定や,地殻構造,地殻変動,鉱床,地震断層分布などの調査のため,重力の地域的な変化を細かく知る必要がある.要求される精度は1mGal〜0.01mGalの程度である.この範囲の重力精度(1ppm-0.01ppm)は測量の分野が特に求めるもので,地球上グローバルにかつ稠密に知ることが望まれており,それが我々の当面のターゲットである.

 19世紀以来,今日まで,陸海空での重力測定の試みが多くなされた.1921年オランダのベニングマイネス(Vening Meinesz F.A.)による潜水艦上での重力測定,1959年の米国のルシアン・ラコスト(Lucien LaCoste)やドイツのアントン・グラーフ(Anton Graf)による陸上・海上・空中重力計の開発,1970-1980年代米国のウイリアム・ガマート(William Gumert)のヘリコプターによる重力測定への挑戦,1980-1990年代の米国のジョン・ブロジーナ(John Brozena)による固定翼機による重力概査の成功,などがその主なものである.その後,1990年代から今日までに米国,カナダ,ドイツ,デンマーク,オーストラリア,日本などで,様々な方法で空中重力測定の技術開発がなされてきた.重力センサーも従来の加速度計のみならず,慣性センサー,重力偏差センサー,絶対重力センサーなど新しいものへの挑戦も行なわれている.

 今日までに重力測定は陸海空のみならず宇宙からでも行われている.重力はすでに十分に測られているではないかと思う人もいるだろう.しかし,実状は否である.日本列島に限ってみても,海岸線沿いに幅20マイル程度の重力空白域があり,山岳地帯や海洋島周辺では,複雑な自然環境のために,重力測定ができないか,あるいはできても精度が悪い.重力データのギャップは重力の精度の悪さ以上に,実質的には悪影響があり,ジオイド,地下構造,地殻変動などの研究の障害となる.航空重力測定は,まさにこのような重力研究のギャップを迅速に埋めていく手段として期待するところがきわめて大きい.図1に航空重力測定と地球との関係,つまり地球楕円体面,ジオイドおよび飛行高度との関係を示し,GPSとの組み合わせにより,航空重力測定からまず重力乱れ“(gravity disturbance)”が得られることを示す.


図1. 航空機(ヘリコプター)はGPSに従って正規楕円体面からの高さh e(Normal Ellipsoidal Height)を一定に保ちながら飛行をする.従って楕円体面上の正規重力γ eとの差から「重力乱れ」が得られる.ジオイド高(geoidal height)をh gとすると航空機のジオイド(geoid)からの高さはh e-h gとなり,これからフリーエア補正を行った重力g h gよりフリーエア重力異常が得られる.航空重力と地上・海上重力との比較を行うときにはその場所のジオイド高を考慮しなければならない.



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