目次 | 第3部 応用編 | 航空重力測定
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1.役割 2.現状 3.測定システム 4.測定例 おわりに

航空重力測定 − 航空重力測定の現状

 航空重力の測定精度は年々向上しているが,測定装置と測定者によって幅があり,また,気象条件等に敏感なので,当たりはずれもある.チャンピオンデータについてのべれば,30年前の±20mGalから現在の±0.5〜2mGalと進歩したと見てよい.ただし,航空重力測定は一貫した事業になっていない,言い換えれば,各種各様バラバラに行なわれているというわけである.このようにシステムが未熟であるという意味で新しい事業と見なすこともできる.

 日本の状況は,航空機が使いにくい風土のせいか,今日まで関心が薄かったと思う.また,日本は世界でも最も良く重力が測られている国であるので,今さら飛行機を持ち出す必要は無いという認識が強かったかもしれない.しかし,自ら開発した重力計システムによる測定実績を通して筆者等は次のことを実感した.まず,日本にも重力データ空白域が多くあり,これが今後の測地,測量事業に大きな障害となること,さらに,筆者等の測定によって,過去数十年日本で測定された重力データが陸と海で調和的ではないと言うことを発見した.空中重力測定の最大の特徴は陸海の連続データが一貫した測定環境の下で短時間に得られることにある.こうして得られた航空重力データと“Ground truth”である陸上データと海上データを比較すると両者に大きな矛盾がある場合があることが分かってきた.今日まで,日本では海上重力データと陸上データとを客観的に比較したことはなく,また,その術がなかった.陸海の重力不一致は日本及びその周辺のデータが航空重力を仲介して再検討されなければいけない事を示す.実はこの問題は日本だけにとどまらず,世界の重力データに当てはまる問題であり,今後,膨大な課題が残されるものと考える.




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