地球は短期の力に対しては弾性体として,長期にわたって働く力に対しては粘弾性体として振る舞うことが知られている.地球表面に重いものを置くことによる地球の変形を荷重変形という(図1).季節的に生じるような短期的な荷重に対する変形は弾性変形であり,荷重がなくなると変形はもとにもどる.一方,氷期における氷床の発達など長い時間スケールの荷重に対しては粘弾性的な荷重変形を行う.この場合は荷重が生じた瞬間に弾性変形を行ったのちも,粘性によるゆっくりした変形が長い期間継続するのである.
どこまでも平に広がった大地(半無限弾性体)の表面の一点に力を及ぼした際の地面の弾性変形は,古典的弾性論の大家ブシネスクによって19世紀に求められた.これは狭い範囲での荷重変形の議論には十分であるが,ある程度広範囲に働く荷重の応答を計算するためには実際の地球の形状と内部構造を考慮する必要がある.現在では標準的な地球モデルに基づいて計算された,点荷重に対する地球の弾性変形を表す荷重グリーン関数が広く用いられている.
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図1. 地球上の荷重があると,地表が沈降するだけでなく,荷重直下は水平方向に縮み,荷重周辺はわずかに伸びる.
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