目次 | 第3部 応用編 | 常時地球自由振動
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1.概要 2.観測事実と原因 3.今後の展望

常時地球自由振動 − 今後の展望

 常時地球自由振動現象の原因を探るために,新たな観測が始められている.房総半島南部の東京大学千葉演習林では,東西5km,南北10kmの範囲に30台近くの超高分解能微気圧計を設置し,気圧変動から未発見の大気常時自由振動を検出する試みが始められた.また,岐阜県の神岡鉱山では,京都大学と東京大学の研究グループが,長さ100mのレーザー伸縮計を設置して,伸び縮み成分だけでなく,ねじれ成分の高精度観測を開始した.新しい観測手段の導入によって,今後,常時地球自由振動現象が詳しく解明されるであろう.

 常時地球自由振動研究の意義は,固体地球と流体地球(大気・海洋)の相互作用の解明にとどまらない.将来,惑星科学にも貢献する可能性を秘めている.1996年の日本惑星科学会で,常時地球自由振動発見のきっかけとなった「地球・火星・金星では,大気が惑星表面を叩くことによってnGal程度の振幅で惑星が振動する.」という予測が発表された.プレートテクトニクスのない火星や金星では,自由振動を起こすような大きな地震はないと考えられている.しかし,予測通りに地球のような常時自由振動が起きていて,それを観測することができれば,惑星の内部構造に関する有力な手がかりを得ることになる.


参考文献
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