目次 | 第3部 応用編 | 常時地球自由振動
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1.概要 2.観測事実と原因 3.今後の展望

常時地球自由振動 − 概要

 大きな地震が起きると,地球全体が数分から1時間くらいの周期で何日も振動し続ける(図1).この現象は地球自由振動と呼ばれ,1960年に南米で発生したチリ地震の際に,重力計やひずみ計などによって初めて観測された.それ以降,地球自由振動の観測記録を解析することによって,震源過程や地球内部構造の研究が行われてきた.

 地球自由振動は,最近まで,大きな地震のときにだけ起こる現象と考えられてきた.しかし,1998年に,名古屋大学を中心とする研究グループが,地震が起こらなくても地球自由振動が常に発生しているという,これまでの常識を覆す現象を発見した.

 この研究グループは,南極・昭和基地に設置された超伝導重力計や,ラコスト重力計を用いたグローバルネットワークの連続記録のスペクトル解析を行った.そして,従来はノイズと考えられていた地震の起きていない静かな期間の記録から,非常に微弱な(振幅が重力加速度の単位にしてnGal:ナノガルレベル)地球自由振動の信号を検出することに成功したのである.

 新しく発見されたこの現象は,日本語では「常時地球自由振動」,英語では“Earth's background free oscillations”と呼ばれている.


図1. 地球自由振動の振動パターンの例.フットボールモードと呼ばれる0S 2モードでは,約1時間の周期で地球が伸び縮みする.(図協力:須田直樹)



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