目次 | 第3部 応用編 | 荷重変形
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1.荷重変形 2.大気による荷重変形 3.陸水による荷重変形 4.グローバルな荷重変形 5.海水の荷重 6.荷重変化と地震

荷重変形 − グローバルな荷重変形

 雪だけでなく,大気圧の平均値も季節変化する.西日本では冬の平均気圧は夏に比べて10hPa以上も高いのだが,これは冬に大地一面に深さ十数cmに張った水が夏に消えることに相当する.またユーラシア大陸東部には冬になるとシベリア高気圧が居座る.土壌に含まれる水分も季節変化する.夏の間は植物による蒸散作用や地面からの蒸発作用が活発になる.そのため夏の雨量が比較的少ない地域では土壌水分も荷重の季節変動に寄与する.他にダムに貯えられた水,さらには地下水や水田に引かれた水による荷重も季節変化する.雪に限らず一般的にこれらの荷重は冬になると増える傾向があるため,一月は七月に比べて北半球が「重く」なる.南半球の冬になると逆に北半球に集まっていた陸水や大気の重しが南に移動する(図4).

 これらのグローバルな荷重の季節移動は,冬を迎えている半球の地面が縮んで凹み,夏の半球が伸びて出っ張る一種の荷重変形として観測できる.北半球と南半球の交互の伸び縮みは全世界に展開されたGPS観測網で近年確認された.グローバルな荷重の移動は地球重心位置の季節変動をもたらす.人工衛星は地球の引力に引かれて軌道運動をしている.軌道の中心(正確に言うと楕円軌道の焦点になる)が地球の重心になるため,SLRの観測などで地上局と地球重心の位置関係を求めることができる.最近の観測では地球の重心が地球上の質量の季節的な移動ともに南北に1cmほどの振幅でふらふら動くことも確認されている.


図4. 季節の移り変わりにより大気や陸水が北半球と南半球の間を行き来し,そのせいで地球の重心も季節によってわずかに南北に移動するのがSLR衛星の軌道の中心の移動として観測できる.重くなる側を暗い色で表している.



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