地表には常時大気の圧力がかかっている.その大きさはおよそ1000hPaなので,深さ10mもの水の圧力と等価になる.ただし大気圧の変動は,季節的にはその1%程度,台風など一時的な低気圧でも気圧の差は全体の数%程度なので,ほぼ変形しっぱなし状態になっている.また海上の気圧変化は海水の移動によって海底では時間空間的に一定にならされてしまうので,一般には陸地の上にかかる気圧の変化分だけが観測可能な荷重変形になる(図2).気圧の変動に伴う地面の上下は超長基線電波干渉法(VLBI)や全地球測位システム(GPS)などの宇宙技術を用いて検出されている.同じ気圧の変動でも気圧擾乱の空間スケールの違いや観測局の海岸線からの距離によって応答の大きさが異なるが,最大で2cm程度の上下が生じるようである.
電波を用いるVLBIやGPSは全天候型であるが,レーザー光線を用いる測位法である人工衛星レーザー測距(SLR)は衛星の方向に雲がないことが観測の条件になる.したがってSLRの観測は概して天気が良い,つまり気圧が高い時に行われることが多くなる.そのためSLRで計測された局位置の鉛直成分はVLBI/GPSで測った位置より幾分下にずれて出る傾向があることが知られている.
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図2. 高気圧がもたらす大気荷重による地球表面の変形.陸地はそのまま凹むが海洋では海面が凹むだけで海底はほとんど凹まない.
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