目次 | 第3部 応用編 | SAR地殻変動
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1.干渉SARとは 2.干渉SARの原理 3.干渉画像 4.波長による干渉性の違い 5.干渉SARの誤差要因 6.干渉SARで捉えた地殻変動(1) 7.干渉SARで捉えた地殻変動(2) 8.干渉SAR解析の応用 -2.5次元観測-

SAR地殻変動 − 干渉SAR解析の応用 − 2.5次元観測 −

 これまでの説明のように,干渉SARで捉えられるのは衛星と地表の各地点との距離の変化量である.つまり,検出される各地点の変位量は衛星視線方向の1次元成分のみである.しかし,もし同じ地点について異なる2方向以上から観測が行われていれば,観測結果を組み合わせることにより2次元,3次元の変位成分を求めることができる(Fujiwara et al., 2000).

 人工衛星を利用したSAR観測の場合,同一地域を上昇(北行)軌道と下降(南行)軌道からの2方向から観測を行うことができる.それぞれの軌道からの観測データで作成した干渉SAR画像を組み合わせることによって,地表のある地点において衛星の視線方向が張る平面(衛星視線方向面)上の変位成分を求めることができる(図10).地表の各地点(2次元的に分布)について視線方向面上の変位(2次元成分)を得られることから,この手法は2.5次元観測と呼ばれる.

 図11は,1998年9月3日に岩手山の西麓で発生したM6.1の地震に伴う地殻変動を捉えた2方向の干渉SAR画像(前項図9cおよび9f)から計算した2.5次元変動である.この地震は,西に傾斜するほぼ南北走向の断層が逆断層運動したと推定されている.2.5次元変動のプロファイル(図11c)では,西側の地域が東側に乗り上げる逆断層運動に伴う変位が見事に捉えられている.


図10.人工衛星の2つの軌道と地表の対象との関係.2方向の観測を組み合わせることで「衛星視線方向面」内の変位が検出できる.

図11. 1998年9月に岩手山西麓で発生した地震の地殻変動の2.5次元検出.(a)上向き変位量,(b)東向き変位量,(c)a,bの白線における変位のプロファイル.番号はそれぞれ白線の番号と対応する.

参考文献
Fujiwara, S., T. Nishimura, M. Murakami, H. Nakagawa, M. Tobita and P. A. Rosen(2000):2.5-D surface deformation of M6.1 earthquake near Mt Iwate detected by SAR interferometry, Geophys. Res. Lett., 27, 2049-2052.



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