目次 | 第3部 応用編 | SAR地殻変動
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1.干渉SARとは 2.干渉SARの原理 3.干渉画像 4.波長による干渉性の違い 5.干渉SARの誤差要因 6.干渉SARで捉えた地殻変動(1) 7.干渉SARで捉えた地殻変動(2) 8.干渉SAR解析の応用 -2.5次元観測-

SAR地殻変動 − 波長による干渉性の違い

 前項での(式3)から,地表変位による2πの位相変化が,用いるマイクロ波の波長の1/2の変位量に相当することが分かる.したがって,マイクロ波の波長が短いほど地表変位に対する感度が高くなる.

 衛星搭載SARでは,主にX-band(波長2.4〜3.75cm),C-band(波長3.75〜7.5cm),L-band(波長15〜30cm)のマイクロ波が用いられている.波長の短いマイクロ波ほど地上の分解能は高くなるが,樹木などの植生の透過性は悪くなる.森林などでは樹冠部で反射するようになるが,樹冠部は,風などによる動揺や成長などにより,2回の観測の間で大きく特性が変化する.そのことから,C-bandなど波長の短いマイクロ波は,森林地域などでは干渉が困難になる.それに対し,L-bandのマイクロ波は樹冠部を透過することができるため,変化の少ない地面などで反射が起こり,森林でも干渉が得られる(藤原・飛田,1996).

 日本のように山地が植生で覆われている地域では,地盤沈下など都市部で多く見られる現象を対象とする場合はC-bandが有利であり,火山活動などによる地殻変動を対象とする場合にはL-bandが有利であるといえる.対象となる地域と現象にあわせて用いる波長を適切に選ぶことが重要である.

 宇宙開発事業団(現在は宇宙航空研究開発機構)が打ち上げたJERS-1(ふよう1号)はL-bandのマイクロ波(波長23.5cm)を用いるSARを搭載していたが,1998年10月に運用が停止されたため,現在運用中のSAR衛星は全てC-bandのマイクロ波を用いた衛星である.宇宙航空研究開発機構(JAXA)が2005年に打ち上げを予定している陸域観測技術衛星(ALOS)は,L-bandのSARセンサを搭載しており,地殻変動研究者の注目を集めている.


参考文献
藤原智・飛田幹男(1999):地表変動検出のための干渉SAR画像作成技術, 測地学会誌, 45, p283-295.



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