1957年10月5日,ソ連は人類史上初の人工衛星打ち上げに成功した.翌年1月にはアメリカも人工衛星を打ち上げた.これら人工衛星は,地球が球対称であると仮定すると,ケプラーの法則にしたがって地球の重心を1つの焦点とする楕円軌道を描く.この軌道は,軌道の楕円の長半径とその離心率,近地点の方向(近地点引数),赤道面に対する傾斜角,赤道面との交点(昇交点)の経度,そしてある位置を通過する時刻(近地点通過時刻)の合計6つの量で表される.しかし,地球は赤道部が膨らんだ楕円体で,しかも空気の抵抗もあるため,完全な楕円軌道にはならない.地球が楕円体であれば,近地点や昇交点の経度が変化する.
1958年3月に打ち上げられたバンガード1号という人工衛星をNASAがミニトラックという干渉計で追跡していたところ,近地点の高さが周期的に変動していることが発見された.このような変動は地球が赤道面に対して対称であれば起こらないことである.当時スミソニアン天文台に滞在していた古在由秀は,この軌道の変化を元に地球の形,つまりジオイドの形が図3に示すように北極が南極よりも40m強飛び出ていることを見いだした.これが西洋梨型と言われる地球の形である.
その後,様々な軌道をもつ人工衛星が打ち上げられるとともに,ジオイドと人工衛星の軌道変化の関係式も確立され,より詳しいジオイドの形が,人工衛星の軌道から求められるようになった.
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図3. 人工衛星の軌道解析から求められた西洋梨型の地球(古在由秀著『地球をはかる』(岩波科学の本7)より)
参考文献
東京図書高校教科書:地学IB
古在由秀(1973):地球をはかる,岩波科学の本7
日本測地学会監修・大久保修平編著(2004):地球が丸いってほんとうですか−測地学者に50の質問,朝日選書752,朝日新聞社.
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