目次 | 第3部 応用編 | 地球の形 今昔
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地球の形 今昔 − 楕円体の地球

 17世紀の後半になり,パリ天文台のリシェーが天体観測のため南米フランス領ギアナのカイエンヌ(北緯5°)に行ったところ,バリ(北緯49°)で調整した振り子時計が1日に2分28秒遅れた.また,カイエンヌで調整した時計をパリに持ち帰ると,今度は1日に2分28秒進んだ.ニュートンは,これは,カイエンヌの重力がパリより小さいためであるとした.重力の差は


程度であるのに対し,地球自転の遠心力の重力に及ぼす影響は


であり,その差1.4×10-2ms-2だけ,カイエンヌの方がパリより地球の引力が小さいことになる.これは,地球が極半径より赤道半径の方が長い楕円体(oblate)であることを意味する.さらにニュートンは,1687年に出版した「プリンキピア」の中で,地球と同じ大きさで一様な密度を持つ球が1日に1回自転しているときに引力と遠心力が釣り合う形を計算から求めた.その結果,扁平率f =(a -b )/a が1/230となった.また,1690年に,ホイヘンスは地球の質量が中心に集中していると仮定したときの地球の釣り合いの形を求め,扁平率f =1/578を得た.これらの結果は,すべて地球がoblateであることを示している.

 ところが,カッシーニ父子が,フランス国内での測量結果を基に子午線弧長を求めたところ,低緯度の方が高緯度より長くなった.この結果は,地球が赤道半径より極半径の方が長い楕円体(prolate)であることを意味する.

 そのため,地球の形はoblateかprolateであるのかが大問題になった.この問題に決着をつけるため,フランス王立科学学士院は,スカンジナビア半島北部のラップランドと赤道直下のペルーに測量隊を派遣して,それぞれの子午線弧長を求めた.その結果は,高緯度地方の方が低緯度地方より子午線弧長が長く,地球の形はoblateであることが判明した.18世紀の中ごろのことである.


図2. 緯度による子午線弧長の違い.地球がoblateなら高緯度のほうが低緯度より子午線弧長が長くなる.



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