目次 | 第3部 応用編 | ジオイド決定
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ジオイド決定 − 重力分布の乱れとジオイド起伏

 地表における重力というのは,その場所における地球の質量による引力と地球自転による遠心力からなっている.重力分布の不均質さやジオイド形状に起伏を生じる原因は,地球(内部)の質量分布における不均質性にある.地形の起伏は質量分布の不均質性を如実に示しており,核とマントル境界面に起伏があれば同様に大きな質量分布の不均質をもたらす.また,地形に起伏がなくても,その構成岩石の密度分布が大きく異なっていれば,重力分布やジオイド形状に乱れを生じる(図2).

 質量や密度分布の乱れによって生じる重力の変化は,万有引力の法則に従い,原因である物質からの距離の2乗に反比例して小さくなり,十分遠方では差がなくなる.従って,地球表面での重力の乱れを波長に分けて考えるとき,短波長の変化は,その近くにある小さな規模での質量分布の乱れが原因である.長波長の変化は,遠方にある,または,大きな規模での質量分布の乱れによっていることになる.逆に,地表面のある場所でみられる短波長の重力分布の変化は,上空など原因となる乱れた質量分布域から離れると見えなくなるが,長波長の重力分布の変化は,地球の上空を周回する人工衛星の高度などにおいてもみられる(衛星重力ミッション」参照).このため,地球を周回する人工衛星の軌道の乱れを観測することで,地球の重力場の極めて長い波長の変化を測定することができる.


図2. 地下にある質量異常による重力分布の乱れ(ピンクのベクトル)と重力等ポテンシャル面の起伏(黒石,2003).

参考文献
黒石裕樹(2003):宇宙測地における座標系の取り扱いについて −その1 標高基準 −,国土地理院時報,102,21-32.




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