目次 | 第3部 応用編 | ジオイド決定
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1.決定の方法 2.ジオイド起伏 3.JGEOID2000 4.GSIGEO2000

ジオイド決定 − 日本の重力ジオイド・モデル JGEOID2000の決定

 重力ジオイドの決定では,基本的に全地球表面での重力分布が必要になるが,陸海域も含め,詳細で高精度な重力測定が行われている所は限られている.しかし,例えば日本とその周辺といった限られた地域について詳細に重力分布が分かっている場合,その地域に特化して詳細なジオイドを決定することができる.

 ジオイド決定(2)で述べたように,ジオイドの細かな(短波長)の起伏はその近くに原因(質量分布の小規模な乱れ)があり,長波長の起伏は大きな規模の,あるいは遠方(深いところでの)で大きな質量分布の変化が原因であって人工衛星観測で全地球規模の測定ができるのである.そこで,人工衛星観測に基づく長波長の重力分布による全球的なジオイド・モデルを基盤にし,ジオイド決定を詳細に行いたい地域について,当該地域で得られた重力分布から,まず全球重力モデルを差し引いて(remove)重力の細かなずれをストークス積分に従って求め,これによるジオイド起伏の細かな変化を計算し,それを元の全球ジオイド・モデルに足しあわせる(restore)ことで,その地域についての細かなジオイド・モデルを決定するのである.この方法は,その処理からremove-restore法と呼ばれる.

 この方法を適用し,EGM96(Lemoine et al., 1997)を全球モデルとし,日本周辺の陸・海上での重力測定データ,陸地についてのグリッド標高モデルを用いて重力ジオイド・モデルJGEOID2000が決定された(Kuroishi,2001).JGEOID2000による日本周辺のジオイド起伏を鳥瞰図としてしめしたのが図3である.図3から,ジオイド起伏が全体的には陸・海底の地形起伏によく対応し,千島−日本−伊豆・小笠原海溝や駿河・相模・南海トラフから琉球海溝に沿った溝状の凹みや中部山岳地方の膨らみなどが明らかである.

 重力ジオイド・モデルは陸海の重力データの分布域の範囲を超えた長い波長についてのジオイド起伏を完全に全球ジオイド・モデルに用いているため,そのモデルの誤差がそのまま残ってしまう欠点があるが,データが分布している領域については面的に細かなジオイド起伏を復元している.


図3. 重力ジオイド・モデルJGEOID2000(Kuroishi, 2001)の鳥瞰図.

参考文献
Lemoine, F.G., D.E. Smith, L Kunz, R. Smith, E.C. Pavlis, N.K. Pavlis, S.M. Klosko, D.S. Chinn, M.H. Torrence, R.G. William-son, C.M. Cox, K.E. Rachlin, Y.M. Wang, S.C. Kenyon, R. Salman, R. Trimmer, R.H. Rapp, R.S. Nerem(1997): The Development of the NASA GSFC and NIMA Joint Geopotential Model Segawa J et al. eds., Geoid and Marine Geodesy, IAG Symp. 117, Springer-Verlag, Berlin Heidelberg, 461-469.
Kuroishi Y(2001):A new geoid model for Japan, JGEOID2000. Sideris M (ed.) Gravity, Geoid and Geodynamics 2000, International Association of Geodesy Symposia Vol 123, Springer, Berlin Heidelberg New York, 329-333.



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