目次 | 第3部 応用編 | 超伝導重力計
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1.超伝導重力計とは 2.感度 3.原理 4.感度検定 5.応用(I) 6.応用(II)

超伝導重力計 − 超伝導重力計とは

 重力は,形状と並んで,地球の構成についてのもっとも基本的な情報の1つである.ある場所で働く重力は,大気や海洋を含めた地球を構成しているすべての物質による万有引力を積分したものと,地球の自転による遠心力とを,ベクトル的に合成したものである.地球の自転の効果をぬきにして考えることにすると,地球の表面における重力加速度の大きさ(およそ9.8ms-2)は,第一近似としては地球の大きさと質量によって決まっていて,日常的な意味合いでは場所や時間によらない定数である.より詳細に見れば,重力は場所によって異なるし,時間的にも変化している.重力は物質の質量に由来しているから,重力を詳細に測定することにより,地球の質量分布や物質の移動についての情報を得ることができる.このような目的のために重力加速度の大きさおよびその時間・空間的な変化を測定する装置が,重力計である.

 重力計には,大きく分けると,重力加速度の絶対値を測定するのに用いられる絶対重力計と,重力加速度の変化分を測定するのに用いられる相対重力計とがある.絶対重力計は,重力加速度の絶対値が得られるかわりに,装置が複雑で大がかりになる傾向があり,装置の可搬性や測定速度の点で制約がある.一方,相対重力計は,重力加速度の絶対値は直接得られないものの,可搬性にすぐれていて,分解能が高いといった特徴をもつ傾向がある.両者は同じ重力計という名称で呼ばれるものの,実際にはかなり異なる性格の装置であり,うまく組み合わせて使うことで互いに相補的な役割をもたせることもできる.

 超伝導重力計(Superconducting Gravimeter)は,アメリカのGoodkindらによって開発された,相対重力計の一種である.これは,その名が示すとおり,超伝導現象を利用した動作原理に基づく重力計である.現在はGWRという会社(http://www.gwrinstruments.com/)によって製造され,世界で20台ほどが稼働している.日本国内には現在4台が置かれている.重力計本体の大きさは,最近の小型のタイプのもので直径0.7m,高さ1m程度である.重力計の外観はデュワーびん(魔法びん)となっており,その内部に液体ヘリウムが入れられ,びんの首の部分を冷凍機で冷やすことにより内部は極低温に保たれている.その中で超伝導状態が作られ,重力センサーが動作している.この重力計はあちこちへ移動しながら重力を測定するような用途には向いておらず,基本的には一カ所に据え置いて使うタイプの装置であるが,より小型で可搬性が高く,移動体(船・飛行機など)にも搭載できるような形式のものも開発が進められている.

 超伝導重力計の最大の特長は,きわめて高い感度と,長期的な安定性である.万有引力というのは遠方まで届く作用であり,しかも途中に何があっても遮蔽されないという特性がある.したがって,重力の変化を精密に観測することで,観測点の周辺だけでなく,地球全体の物質の移動や振動に関する情報を得ることができるのである.


図1. 超伝導重力計(GWR社のWebページより).

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GWR社


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