超伝導重力計から出力される電気信号を重力変化に読みかえるためには,装置に固有のある係数(キャリブレーション・ファクタまたはスケール・ファクタと呼ばれる)をかけ算してやらなければならない.スケール・ファクタは,装置の感度についての情報を与える非常に重要な定数だが,同じ種類の超伝導重力計でも1台ごとに異なっており,メーカーによって検定値が与えられるわけでもないので,感度の検定は各ユーザーの責任において行わなければならない.超伝導重力計はもっとも感度の高い重力計であるので,感度の検定にも相当の工夫を要し,それじたいがちょっとした仕事になってしまう.
超伝導重力計の感度検定の方法には,大きく分けて,直接的な方法と間接的な方法の2種類がある.直接的な検定方法では,既知の加速度を装置に対して人工的に与える.この,加速度を与える方法にさらに2種類ある.1つは,装置の近くで質量の大きな物体を移動させ,物体が及ぼす万有引力の変化により,センサーの感じる重力加速度を変えるというものである.もう1つは,装置を台の上にのせ,全体を上下に動かすことで,前者と等価な効果を実現するというものである.
一方,間接的な検定方法においては,超伝導重力計と絶対重力計とを並べて観測を行い,両者の記録を比較する.後述のようにさまざまな原因によって重力の大きさは時間変化しているから,超伝導重力計から得られた電圧出力の変化と,絶対重力計から得られた重力変化の絶対値とを比較すれば,超伝導重力計の感度に絶対値の目盛りをふることができるわけである.このような方法による感度検定の例を図4に示す.こうしていったん感度検定のなされた相対重力計は,今度は他の相対重力計の感度を検定する際のリファレンスとして用いることもできる.超伝導重力計と絶対重力計との並行観測は,超伝導重力計の長期的なドリフトを検定するという目的のためにも有効である.これらは,超伝導重力計と絶対重力計という2種類の重力計の,互いに相補的な役割を表す好例である.
以上のような方法でなされた超伝導重力計の感度検定の精度は,せいぜい0.1%かそれを少し超える程度にとどまっており,感度を検定するということの本質的な難しさを示している.
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