SELENE計画では,月の表面形状と重力場を新しい手法で高精度に観測することが一つの特徴である.それに関係するのが,リレー衛星搭載中継器(RSAT),相対VLBI用電波源(VRAD),レーザー高度計(LALT)の3つのミッションである.
RSATミッションでは,主衛星が月の裏側を飛んでいる間も,リレー衛星を中継することによってその軌道を追跡し,月の裏側の重力場を直接観測する(4-wayドップラー観測:次頁参照).VRADミッションでは,VLBIによって2つの子衛星の間の角距離を正確に測定し,ドップラー観測と組み合わせて軌道と重力場の3次元観測を行う.LALTミッションでは,レーザー高度計を用いて月面全面にわたって,最高精度,最高頻度で月面の絶対高度を測定する.また,これらのデータをもとに精密な月面地形図を作成する.いずれも世界で初めての試みである.
表2. SELENEのレーザー高度計(LALT)と1994年の Clementine探査機の高度計(LIDAR)の比較
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Clementine(LIDAR) |
SELENE(LALT) |
精度 |
40m |
5m |
測定間隔(軌道方向) (軌道間隔) |
20km 60km |
16km 2km |
月面上の レーザービームの直径 |
200m |
30m |
測定範囲 |
南緯89度 〜北緯81度 |
南緯90度 〜北緯90度 |
データ数 |
72,548 |
31,500,000 |
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図1. SELENEで観測される重力場の各次数の予想精度.LunarProspector探査機で得られた重力場モデルLP100Jより1桁以上向上する.
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