陸上における地殻変動観測ではボアホール観測は重要な項目である.GPSなどとは違い,この方法は原理的には深海底でも実行可能である.実際,国際深海掘削計画では,陸上のボアホール観測で実用化された傾斜計とひずみ計を深海用に改造し,三陸沖の海底掘削孔に設置している.
陸上の地殻変動観測においては,陸の表層部が降雨や温度変化,大気の擾乱等の影響を受けるために,長い基線長の観測か深いボアホールの観測以外は信頼できないという問題がある.深海底の観測は困難を伴うが,雨や地下水の問題がなく天然の恒温糟であるという意味では,深海底は地殻変動観測にとって理想的な環境であるといえる.
中央海嶺の付近では堆積物が少なく地下の温度勾配も高いので本格的な掘削が難しい.そこで岩盤に1m程度の浅い穴をあけて,そこで傾斜とひずみの観測を行うことが提案されている.また,中央海嶺の付近では玄武岩が海底を覆っているので,海底の窪みに設置した測器により地球潮汐による傾斜変動を観測したという報告もある.しかし沈み込み帯では,海底は一般に厚い堆積物に覆われており,傾斜やひずみの観測には深い掘削孔が必要である.
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