VERAでは4局の電波望遠鏡の位置関係を10-9の精度で求めていくことを目標にしている.つまり,基線長が1000km〜2300kmであることら,互いの位置関係を3次元で1mm〜2mmの精度で維持していく.この精度を維持するために,VERAでは最大週1回の測地観測を繰り返し行うことを計画している.また,相対的な位置関係だけではなく,望遠鏡の位置を世界的な地球基準座標系(ITRF:International Terrestrial Reference Frame)の中で10mmの精度で求めておく必要がある.このためにVERAの1局である水沢局では,ITRF系の座標値が良く求められている国土地理院つくば局との間でVLBI観測を繰り返し実施している.最初の観測は2002年の12月に行われ,2003年中は計6回の観測が行われている.2004年の後半以降は,月に1度程度の頻度で観測が行われている.
VERAの4局の観測からは,どんなデータが得られるであろうか.本書執筆中の2004年の夏現在,VERA4局での測地観測システムは相関処理を含めた最後の調整段階のため,残念ながらまだ時系列にまとまった観測資料が無い.そこでVERAで得られるデータのそのイメージをつかむためにVERA各局で行われているGPSの連続観測の結果を紹介しておこう(図9).プレート運動の大きさは最大で年70mmにも達していることが分かるであろう.VERAでは,観測頻度や1回の観測精度は異なるものの,GPSで得られたデータと同様な時系列データを蓄積していくことになる.VERAの役割としては広域な変動や地球規模の変動を捕らえる基準点,重力変化などの他の観測手段と組み合わせた総合的な測地観測拠点としての役割が期待される.
VLBIとGPSのコロケーション観測(図10,図11)は,宇宙技術の測地分野で指摘されている両手法における「距離スケールの差異」の問題といった,基礎的な研究資料を提供することにも貢献できるであろう.
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