VERAのVLBI観測では,どんな観測を行なわれるのか,ここにごく簡単に説明しておこう.電波望遠鏡の位置を決めたり,地球の回転運動を調べる測地観測では,通常2GHz帯(S帯)と8GHz帯(X帯)で観測が行われる.また電波天文観測では,水分子や一酸化珪素が出すメーザ現象と呼ばれる特定の周波数の電波を観測するために,それぞれ22GHz帯(K帯)や43GHz帯(Q帯)で観測が行われる.測地観測の場合も,観測帯域を広くとれること,電離層の影響が小さくなることから,22GHz帯で観測が行われることもある.
VERAの電波望遠鏡は,カセグレン式と呼ばれる構造になっている.反射式の光学望遠鏡と同様に,凹面の主鏡で反射された電波は凸面の副鏡でもう一度反射されて焦点面に集められる.主鏡(図2)で集められた電波は,1)望遠鏡上部の観測機器室内のフィードで受信され(図3),2)低雑音の増幅器で増幅し,3)扱い安い低い周波数に変換され,4)1Gbit以上の速度でデジタル・サンプリングが行われ,5)そのデジタル信号が望遠鏡上部から光ケーブルによって観測庁舎まで送られる.庁舎内では(図4),観測された信号をさらに6)デジタル・フィルタを掛けて必要な周波数帯を選びだし,7)1Gbit/秒の速度を持つ磁気テープ装置に記録する,という一連の処理が行われる.電波天文観測の場合は,天体のスペクトル観測が行われることもある.
各観測局で記録された磁気テープ(図5)は,国立天文台の三鷹にある相関局に集められ,そこで観測された信号を再生し「相関処理」と呼ばれる処理を行って,初めて意味のある観測量になる.さらに,それから解析を進め,測地観測・位置天文学としては電波望遠鏡の位置や,電波源の位置が求められる.また,天体物理の観測としては,電波源の構造(空間的な広がり,周波数的な広がり(視線速度))などが調べられる.
VLBI技術については詳しく知るには,たとえば,高橋冨士信・近藤哲朗・高橋幸雄共著「VLBI技術」オーム社,を参考されたい.
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