VERAでは,10万分の1秒角の分解能を達成するために,相対VLBI法という独特の観測手法を取り入れたことに最大の特色がある.10万分の1秒角という大きさは,地上から見る月面にある1円玉の直径に相当する角度である.測地観測の場合は相対VLBIという手法を使わずに従来どおりの観測手法を取っているのであるが,天体の位置観測に威力を発揮する相対VLBI観測について紹介しよう.
光学望遠鏡で天体の位置観測を行う場合,大気による屈折状態が短時間に変化するために星がまたたいて見えること(シンチレーション現象)は良く知られている.光で天体の位置を測る場合,このシンチレーションのために 0.1〜1秒角という精度で測定するのが限界になっている.電波を出している天体の位置を測定する場合においても,桁は非常に小さくなるもののやはり1000分の1秒角とか1万分の1秒角の精度で位置を測定するの場合に大気の揺らぎ,シンチレーションの影響を大きく受ける.VERAでは,電波望遠鏡の焦点面に2組の受信機が装備されており,2度角以内に近接する2つの電波源を同時に観測することができる.この2天体の同時観測によりシンチレーションを打ち消し,位置の精密観測を可能にしている(図6).
相対VLBI観測を行うためにVERAアンテナの上部機器室内には,目的とする天体の離角に合わせて2組の受信機の位置を可変にする機構,天体の日周運動を追尾するための視野回転機構(図7)が組み込まれている.焦点面内(図8)には,22GHz帯用と43GHz帯用のフィードホーンや受信機,デジタル・サンプリング装置がそれぞれ2組備えられている.
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