量子エレクトロニクスの研究が盛んになりだしたのは1950年代の後半以降であるが,1960年には,固体ルビーを用いたレーザー発振器が初めてこの世に出現した.それに続く1〜2年の間に,様々なタイプのガス・レーザー,半導体レーザーが開発された.中でもヘリウム・ネオン・ガス・レーザーは,可干渉性に優れ,1年以上の長期間にわたって連続発振が可能なことから,干渉計の光源としての利用が急速にすすみ,地球物理の分野でも1960年代の後半から米国や旧ソ連邦を中心として,これらのガス・レーザーを光源として用いたレーザー伸縮計が開発された.わが国においても,1970年代の後半から京都大学防災研究所などでレーザー伸縮計を用いた長期間の地殻変動連続観測が開始された(例えば,Takemoto(1979)).
図2にマイケルソン型干渉計の原理を応用したレーザー伸縮計の構造が示されている.図2において,周波数安定化レーザーから出たレーザー光は,基台(B)(固定端)に固定されたビーム・スプリッター(M0)で2つの光路に分けられる.そのうちの1つは,同じ台(B)上に取り付けられたコーナーキューブ・ミラー(M1)までのごく短い距離を往復する参照光路であり,もう1つは,基台(A)(自由端)に取り付けられたコーナーキューブ・ミラー(M2)までの間を往復する測定光路である.この測定光路の光路長が,従来型伸縮計の基準尺の長さに相当する.M0で分かれた2つのレーザー光は,それぞれの光路を往復した後,再びM0で重ね合わされ,両者の位相の差によって明暗の干渉縞を生ずる.この干渉縞は,AB間の微小な距離変化に伴って,移動するから,この干渉縞の移動を受光素子を用いて電気信号に換えることにより,微小なひずみ変化を定量的に計測できる.
レーザー伸縮計は光の1/2波長を基本単位として定量的な微小変位あるいは微小ひずみの計測が可能である.例えば,光源としてヘリウム・ネオン周波数安定化レーザーの赤色光(波長λ =0.6329μm)を使用した場合,光路長の差が0.316μm変化するごとに干渉縞が1本移動する.たとえば,AB間の長さがを31.6mのレーザー伸縮計は,干渉縞1本の移動が10-8のひずみ変化に対応する.
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