図3の青点はTOPEX/Poseidon によって得られた東経144°,北緯40°付近の海面高度を表している.この約10日毎のデータに潮汐の波を最小二乗法的にフィッティングしたものが赤線である.赤線は複数の潮汐波(それぞれを分潮と呼ぶ)の重ねあわせとして表現されており,フィッティングによって分潮の振幅と位相を決めることができる.全球を細かいグリッドに分け,グリッド毎にこのような潮汐解析を行えば,振幅と位相のグリッドマップを作ることができる.一般に,分潮毎に決めたこのようなグリッドマップを海洋潮汐モデルと呼んでいる.
ただし,TOPEX/Poseidonの軌道が±66°の緯度範囲しかカバーしていないことや,グリッドを細かくすると軌道の間に空白域が出現すること等を考えて,衛星海面高度データと数値モデルを組み合わせて,全球高解像度海洋潮汐モデルを構築する手法が開発されている.図4はこのようにして得られた周期12時間25分のM 2分潮のモデルを図化したものである.位相を白線で,振幅を色分けして描いてある.外洋の験潮データとの比較から,このM 2モデルの精度は1.5cm程度と見積もられている.
海洋潮汐は全球スケールの水質量の移動を引き起こすので,荷重で地面が沈んだり,重力の変化が起きたりする.現代測地学の高い観測精度はこのような影響を精密に補正することを要求しており,高精度海洋潮汐モデルが必要となってきているのである.
|