目次 | 第3部 応用編 | 海洋潮汐
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1.海洋潮汐とは? 2.人工衛星による観測 3.モデル化 4.月・地球系進化

海洋潮汐 − 海洋潮汐とは?

 海洋潮汐とは,いわゆる潮の干満である.潮汐をやや難しく表現すると,「外部天体の引力の作用によって生じる等ポテンシャル面の変化によって,物質の流れや変形が生じる現象」となる.「外部天体」は地球の場合主に月と太陽であり,「引力の作用」の本質は,月や太陽の引力が地球上の場所によって少しずつ違うことである.海洋に生じる潮汐の事を特に海洋潮汐と呼ぶ.干満の差は普通数mであるが,カナダのファンディー湾など,干満の差が15mを超えるような場所も存在する.

  「潮汐」の字が「朝のしおと夕のしお」を示す通り,大雑把に言って,一日2回潮の満ち干が起こる.大雑把なんて言わず,もっと真面目に潮汐を引き起こすポテンシャル(起潮力ポテンシャルという)を計算し,これを理論的に表現してみる.詳細は他の教科書に譲るとして結果を示すと,幾何学的な性質によって図1の3 種類の関数に分けることが出来る.左から,sectorial,tesseral,zonal と呼ばれる2 次の球面調和関数である.赤い部分が出っ張っている部分,青い部分が引っ込んでいる部分である.

 Sectorialを例にとって説明しよう.外部天体として月を考え,月は赤い出っ張りの子午線方向にある.月の引力によるこの凸凹が保たれたまま地球が自転するとどうなるか? 地上にいる人は地球が一回転する間に凸と凹を2 回ずつ経験するだろう.これが一日2回の潮の干満,約半日の周期をもつ波の集まりである半日周潮に対応する.同様に,tesseral,zonal は日周潮,長周期潮に対応する.そう,約一日周期の干満や,一日より長い周期(月なら14日)を持つ干満もあって,これらが重ね合わさっている.また,月と太陽の影響も重ね合わさっている.

 ただし,これはあくまでもポテンシャルの形であって,実際の海の形ではない.現実の地球には複雑な海陸分布があり,海水が動く際の摩擦などの影響があるため,ポテンシャルに対する海水の応答はもっと複雑である.


図1. 3種類の球面調和関数.


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