ゆっくり地震と呼ばれている奇妙な現象は,普通の地震に比べて何桁もゆっくりと断層面のすべり領域が拡大する破壊現象である.ゆっくり地震の中にも,サイレント地震と呼ばれる普通の地震を伴わないもの,スロー地震と呼ばれる普通の地震とサイレント地震が相伴って起こるもの,普通の急激な地震の後にゆっくり生じる余効すべりと呼ばれるものとがある.しかし,最近新しく認識されはじめた自然現象なので,研究者のコミュニティの中でも,未だに用語の混乱がある.
普通の地震の場合は,マグニチュード8の巨大地震でも,全破壊過程は1分から3分で終わる.一方,1989年Mw7.2三陸はるか沖地震,1992年Mw6.9三陸はるか沖地震,1994年Mw7.7三陸はるか沖地震に伴った余効すべりは,それぞれ,約10日,約1日,約1年かけて,本体の地震そのものより大きなモーメントをゆっくり解放した.この様なゆっくり地震は,地震計では検知することが出来ず,GPSや地殻変動連続観測などによって見出されている.
図1は,1994年三陸はるか沖地震のモーメントが時間を追って変化する様子を単純化して示したもので(Heki et al.(1997)による),横軸は年,縦軸はモーメントである.地震時に解放されたモーメントは〜3×1020Nm(Mw7.59相当),それから約1年かけてほぼ同じモーメントが解放され,最終的に〜8×1020Nm(Mw7.84相当)に達した.
最近では,アラスカ,アメリカ西海岸のカスケード,メキシコ西海岸でも,GPSデータによってサイレント地震が見出されている.
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