目次 | 第3部 応用編 | SAR地殻変動
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1.干渉SARとは 2.干渉SARの原理 3.干渉画像 4.波長による干渉性の違い 5.干渉SARの誤差要因 6.干渉SARで捉えた地殻変動(1) 7.干渉SARで捉えた地殻変動(2) 8.干渉SAR解析の応用 -2.5次元観測-

SAR地殻変動 − 干渉SARで捉えた地殻変動(1) 兵庫県南部地震

 干渉SARでは,対象地域に観測施設を設置することなく,地殻変動をリモートセンシングで面的に捉えることができる.したがって,地殻変動観測点の密度が低い地域,あるいは観測点がまったく設置されていない地域でも,イベント発生前および発生後の2時期のデータが存在すれば,その地域の地殻変動を明らかにすることができる.

 1995年1月17日,淡路島付近を震源とする兵庫県南部地震(M7.3)が発生し,阪神・淡路大震災と呼ばれる大きな災害を引き起こした.この当時,全国にGPS連続観測点が配備されつつあったが,観測点数は東海地方を除くと全国に約100点のみであった.観測点間隔は約50kmであり,地震による地殻変動の全貌を明らかにするには観測点間隔が粗すぎる.地震による地殻変動を詳細に知るためには,GPS連続観測点を補完する観測が必要であった.

 図8は,兵庫県南部地震による地殻変動をJERS-1/SARデータを用いた干渉SARで捉えたものである.地表地震断層が現れた淡路島では非常に大きな変位が観測されていることがわかる.断層の東側で衛星に近づく向きに最大で約1mの変位が検出された.この地震は右横ずれの断層運動であったため,水平に運動したとすると断層東側では衛星から遠ざかる向きの変位が検出されると予想されるが,断層の東側が相対的に最大で1.2m隆起していたことが現地での調査からわかっており,上下変動を考慮に入れると干渉SARの結果は矛盾しない.また,地表に地震断層が現れなかった神戸市側でも明瞭な地殻変動が捉えられている.神戸市街地の北部が衛星に近づく向きに変位しており,この地震が右横ずれの断層運動であったことと調和的である.

 この干渉SARによる空間密度の高い地殻変動情報を用いて,震源断層面上のすべり分布の推定が行われている(Ozawa et al., 1997).このように,干渉SARにより得られる空間密度の高い地殻変動情報は,震源断層面上のすべり分布の推定などの研究に用いられ,成果をあげている.


図8. 1995年兵庫県南部地震に伴う地殻変動を示すJERS-1の干渉SAR画像.カラースケールの1周が1.8cmの衛星視線方向の変位量に相当する.

参考文献
Ozawa, S., M. Murakami, S. Fujiwara, M. Tobita(1997):Synthetic Aperture Radar Interferogram of the 1995 Kobe Earthquake and its Geodetic Inversion, Geophys. Res. Letter, 24, 2327-2330.



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