目次 | 第3部 応用編 | SAR地殻変動
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1.干渉SARとは 2.干渉SARの原理 3.干渉画像 4.波長による干渉性の違い 5.干渉SARの誤差要因 6.干渉SARで捉えた地殻変動(1) 7.干渉SARで捉えた地殻変動(2) 8.干渉SAR解析の応用 -2.5次元観測-

SAR地殻変動 − 干渉SARの誤差要因

 干渉SARではGPSと同様にマイクロ波を用いているため,大気に起因する誤差要因もGPSと共通しており,電離層中の荷電粒子による伝播遅延と大気中の水蒸気による伝播遅延が誤差要因として挙げられる.このうち電離層による伝播遅延については,スペースシャトルによるC-bandとL-bandでの同時観測から影響はほとんどないことが報告されている(Rosen et al., 1996).

 これに対し,大気中に含まれる水蒸気による伝播遅延は非常に大きく,数cm以上の変位に相当する位相変化をもたらすことがあるため,干渉SARの大きな誤差要因となっている(Fujiwara et al., 1998).ただし水蒸気量の絶対量が問題なのではなく,大気中の水蒸気が水平方向に不均質に分布することが問題となる.変位がないところに位相変化が現れるなど,解析結果に与える影響が大きいためである.

 水蒸気の不均質分布の影響を低減させる方法はいくつか提案されている.よく用いられるのは,複数の干渉画像を重ね合わせる方法(スタッキング)である.大気中の水蒸気分布が時間的にはランダムであると仮定すると,複数の時期の干渉画像を重ね合わせた場合には水蒸気による位相変化は相互に打ち消されると考えられる.したがって,複数の干渉画像を重ね合わせて平均を取ることにより,1つ1つの干渉画像に含まれていた水蒸気の影響を低減させることができる.この他,GPSの観測により得られる天頂遅延量を用いる方法や,大気モデルを用いて解析的に水蒸気分布を求め補正する方法などにより大気誤差の低減が試みられている.


図7. マイクロ波の伝播過程で生じる誤差.

参考文献
Rosen, P. A., S. Hensley, H. A. Zebker, F. H. Webb and E. J. Fielding(1996):Surface deformation and coherence measurements of Kilauea volcano, Hawaii, from SIR-C radar interferometry, J. Geophys. Res., 101, 23109-23125.
Fujiwara, S., P. A. Rosen, M. Tobita and M. Murakami(1998):Crustal deformation measurements using repeat-pass JERS 1 synthetic aperture radar interferometry near the Izu Peninsula, Japan, J. Geophys. Res., 103, 2411-2426.



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