目次 | 第3部 応用編 | SAR地殻変動
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1.干渉SARとは 2.干渉SARの原理 3.干渉画像 4.波長による干渉性の違い 5.干渉SARの誤差要因 6.干渉SARで捉えた地殻変動(1) 7.干渉SARで捉えた地殻変動(2) 8.干渉SAR解析の応用 -2.5次元観測-

SAR地殻変動 − 干渉SARとは

 地震や火山活動に伴って地下で断層運動やマグマの蓄積などの変化が起こると,それに対応して地表に変形が現れる.逆に,地震や火山活動に伴う地殻変動の観測結果から,地下の断層運動やマグマだまりの位置,その体積変化などを推定することができる.この時,地表での観測点の密度が高いほど,その変動を引き起こした力源について詳細な情報が得られる.近年,高い空間分解能での地殻変動観測を実現できる技術として,干渉SARに注目が集まっている.

 干渉SARは,(2-4-1-4.SAR)で説明されたように,地形や地表変位をリモートセンシングで面的に測定することができる技術である.1990年代に入り,SARを装備した衛星や航空機が次々と実用化されて干渉処理が行われるようになったが,当初は地形計測が主であった.1992年に発生したランダース地震の地殻変動がヨーロッパの衛星ERS-1のデータを用いた干渉SAR解析により明らかにされ(Massonnet et al., 1993),実際に地殻変動の検出が可能であることが示された.この研究により,地表変動の観測手段として干渉SARに注目が集まった.それ以来,世界中のさまざまな地震,火山活動に適用され,これらの活動に伴う地殻変動が明らかにされている.

 特に,干渉SARにはイベントの発生前および発生後の2時期のデータさえ存在すれば観測点が設置されていない地域でも地殻変動を明らかにすることができるという特徴がある.この特徴を生かして,現地に人が容易に立ち入ることができないようなサハリン北部で発生した地震による地殻変動(Tobita et al., 1998)などが明らかにされている.また最近では,干渉SARの空間分解能の高さを利用して地震の断層面上のすべり分布の推定や,マグマだまりの形状の推定などの研究(例えば,Amelung et al., 2000)も行われている.  


関連Webサイト
国土地理院ホームページ内「干渉SAR」の解説ページ

参考文献
Massonnet, D., M. Rossi, C. Carmona, F. Adragna, G. Peltzer, K. Feigl and T. Rabaute (1993):The displacement field of the Landers earthquake mapped by radar interferometry, Nature, 364, 138-142.
Tobita, M., S. Fujiwara, S. Ozawa, P. A. Rosen, E. J. Fielding, C. L. Werner, Mas. Murakami, H. Nakagawa, K. Nitta, and Mak. Murakami(1998):Deformation of the 1995 North Sakhalin earthquake detected by JERS-1/SAR interferometry, Earth, Planets and Space, 50, 313-325.
Amelung, F., S. Jonsson, H. Zebker and P. Segall(2000):Widespread uplift and 'trapdoor' faulting on Galapagos volcanoes observed with radar interferometry, Nature, 407, 993-996.

干渉画像について
本章で扱っている干渉画像は全てJERS-1/SARデータを用い,国土地理院で開発されたGSISARにより干渉処理を行ったものである.用いたJERS-1/SARデータは宇宙開発事業団(現宇宙航空研究開発機構)により処理され,(財)リモート・センシング技術センターにより配布されたものである.データの所有権は宇宙航空技術研究開発機構および経済産業省にある.



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