目次 | 第3部 応用編 | VERA−VLBI
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1.VERAプロジェクトとは 2.どんな観測? 3.相対VLBI法 4.測地観測 5.VERA局の変位 6.位置天文学・天体物理学

VERA−VLBI − VERA局の変位

 ここで,VERA水沢局の位置変動について少し詳しく見てみよう(図12).この図も前述と同様にVLBI観測から得られた結果ではなくGPSの連続観測から得られている成果ではあるが,現在進めているVERAの観測,研究計画を立てる上で非常に参考となろう.図から読み取られる問題点,研究テーマとしては,
1)水平成分の変位速度は,地質学的な年代スケールで求められているプレート運動のモデルと一致するだろうか.プレート運動の収束帯(プレートの沈み込み帯)でもプレート中央の運動と一致するのだろうか.
2)年周的な変動が見受けられるが原因は何であろうか.
3)地震発生時に生じた跳びは,断層運動から予測される変位モデルと調和するであろうか.地震前に前兆的な変動はなかっただろうか.
4)地震後に変位速度が変わったように見えるが,断層が余効的な変動をしているのだろうか.
5)上下成分の決定精度が悪いのは改善できないであろうか.
6)上下の変位速度は,太平洋沿岸の検潮所で観測されている沈降速度や,三陸のリアス式海岸で代表されるような地質学的な沈降速度とどのような関連があるのであろうか.重力加速度の経年変化と調和するであろうか.
など,色々な問題を提起することができる.

 年周変動については,陸水の荷重変化(荷重変形)によって理論的に説明される部分もあるが,他の要因による変動,あるいはなんらかの見かけの変動も含まれるであろう.VERAの位置天文研究の目的である天体の年周視差の観測にとっては,観測局の座標変動に年周変動が含まれると,それが系統的な観測誤差要因になってしまう.座標変動の要因の分からない年周変動成分を単純に経験的な方法により取り除くと,過剰補正ないし過小補正になる恐れもあり,年周変動はやっかいな問題である.VLBI観測に限らないことであるが,年周変動については気象的要因による変動として簡単に片づけられてしまうことがままあった.VERAや超伝導重力計による観測網,衛星重力ミッションでは,広域ないし地球規模での質量分布の変化といった年周現象を捕らえる能力を持っており,グローバルな視点も忘れてはならない.


図12. VERA水沢局の変動の様子.GPSデータの解析では東北大学の三浦哲氏に協力いただいた.



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