目次 | 第3部 応用編 | 航空重力測定
テキストTOP 索引
1.役割 2.現状 3.測定システム 4.測定例 おわりに

航空重力測定 − 日本における測定例

 日本における航空重力測定は7年ほど前,米国の企業に依頼し,ラコスト重力計をバルーンに積んで測ったという例はあったが,それ以外はもっぱら筆者等によるものである.表1に2002年までの測定実績を示した.3年にわたり6測定,飛行時間42時間というものであり,決して多くの測定とはいえないが,航空重力測定の基礎を固めたものとして意義あるものと考える.この中で2000年4月の埼玉-茨城-鹿島灘の測定は特に意義深いのでここに紹介する.測定は高度2000フィートで図5の航路によって行なわれた.ここでは東西方向100海里を2往復,南西-北東方向100海里を1往復したが,往復航路はできるだけ同じコースをとるように務めた.この測線では陸海共に照合重力データがそろっており,航空重力との比較には最適であった.航空重力の往復路における測定値の再現性はきわめてよく,標準偏差1.5mGal,バイアス誤差0.5mGalという結果がでた.この結果は図6a(東西測線),図7a(南西-北東測線)の実線で示されている.同じ図に上方接続をした地上照合データ(Ground Truth)が2種類添えられている.点線のプロフィルは工業技術院地質調査所(旧名)の陸と海のデータ,破線は海上保安庁水路部(旧名)の海のデータである.赤枠で囲んだ部分を図6b図7bに拡大して示した.Ground Truthデータは陸上ではヘリコプターの値と完全に一致するのに,海岸線より海に出たとたん,ヘリコプターの値よりも10-20mGal大きくなる.このことは1980年代に測られた鹿島灘周辺の重力が10-20mGalの系統誤差を持つことになり,今日まで誰もこのことに気がついていなかったわけである.

表1.ヘリコプター重力測定実績(実用測定開始以降)
2000年 4月 埼玉−茨城−鹿島灘 4.5時間
2000年 7月 駿河湾 7.3時間
2000年11月 遠州灘 7.0時間
2001年10月 遠州灘 7.5時間
2001年12月 神津島−三宅島 7.3時間
2002年 6月 遠州灘 8.3時間
  合計 約42時間

図5. 2000年4月埼玉,茨城,鹿島灘におけるヘリコプター重力測定の航路図.片測線はほぼ100海里.高度2000ft.

図6a. 東西方向航路上の往路(下),復路(上)の重力異常プロフィル.実線:ヘリコプターデータ.点線:工業技術院地質調査所の陸海データ.破線:海上保安庁水路部の海上データ横軸は東経単位は度.

図6b. 図6aの赤線で囲まれた部分の拡大図.陸海の境界域から値が食い違い始めることに注意.縦軸は1目盛り10mgal.

図7a. 南西-北東方向航路上の往路(下),復路(上)の重力異常.他は図6aに同じ.

図7b.図7aの赤線で囲まれた部分の拡大図.他は図6bに同じ.



前ページ
(C) Copyright 2004 The Geodetic Society of Japan. All rights reserved.
次ページ