目次 | 第3部 応用編 | ゆっくり地震
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1.ゆっくり地震って? 2.地球ダイナミクスのダークマター? 3.南海トラフ,相模トラフ

ゆっくり地震 − 南海トラフと相模トラフのゆっくり地震

 比較的プレート間カップリングの強いフィリピン海プレートのプレート境界面では,最近10年の間に,普通の地震を伴わないゆっくり地震が5個も見つかった.南海トラフの2001-2004東海サイレント地震,相模トラフの1996年と2002年の房総半島沖サイレント地震などである.図3(川崎(2003)による)の細線コンターはプレート境界面の深さ(伊豆半島以西は三好・石橋(2002),以東は Ishida(1992)による),赤シンボルはサイレント地震,青シンボルは1923年Mw7.9関東大地震,1944年Mw8.0東南海地震,1946年Mw8.0南海地震のアスペリティ,数字はアスペリティでのすべり量である.サイレント地震は,プレート境界面上の深さ30kmより浅い地震発生帯と35kmより深い安定すべり卓越帯の中間で発生していることが分かる.今まで見つかった限りでは,解放したモーメントから換算したサイレント地震のMwは,いずれも7より小さい.

 1年に1個程度の割合で見つかるサイレント地震が,それよりやや深い低周波微動(大きくてもマグニチュード2程度,Obara(2002))や,ほぼ80年から120年の間隔で繰り返す巨大地震とどのような関係にあるのだろうか? 数十年ののち,サイレント地震の1つが急速拡大して巨大地震になるのだろうか? 今のところは不明である.


図3. 南海トラフ,相模トラフ沿いのスロースリップイベント(川崎,2003より).


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